サンリツ服部美術館の服部一郎記念室では、時計王服部金太郎の孫、服部一郎が収集した作品を順次公開しております。この度はその中から「かたち」に注目した展覧会を開催いたします。
まず一つは、ルノワール、デュフィ、ピカソ、ポリアコフといった作家たちの、抽象画に繋がる作品です。
ボールのような花、角張った果物など、絵画を前にして、「見えているかたちとは違う」と感じた経験のある方はいらっしゃるはずです。時として、絵画の中の「かたち」は、目に映るものとは違った姿で表現される事があるからです。
この様な表現が行われる様になったのは、20世紀以降の事。この頃から、正確な写実を重要視しない絵画が現れます。この潮流はやがて幾何学形態だけで構成された作品や、かたちそのものを見極めることさえ難しい抽象絵画へと繋がっていきます。
「かたち」への注目のもう一つが、2020年5月に惜しまれつつ亡くなった現代作家、クリストの作品です。彼の、人工的な色の布で自然の風景を変える作品や、見慣れた都会の風景を一変させる作品は見る側に新鮮なショックを与えます。それは、従来の絵画や彫刻といった枠から飛び出しているのです。
この二つの角度から「かたち」に注目した本展覧会が、ご覧頂いた皆様にとって、絵画を深く楽しみ理解する契機となれば幸いでございます。