向付は、刺身や和え物などが盛られる食器の一つです。懐石では汁椀・飯椀とともに最初に登場し、その後は料理を取り分けるうつわとして使用されます。向付という名称は、膳の手前にある椀の向こう側にうつわが置かれたことからつけられました。
季節や茶会の趣向に合わせて選ばれる懐石道具のなかでも、向付のデザインは実に多彩です。料理の熱が冷めないよう蓋がついたものや動植物をかたどったもの、色彩豊かな文様が描かれたものなど様々です。黒漆塗りの膳や椀とともに出される意匠を凝らした向付を見た客は、これから振舞われる料理や道具組への期待に胸が膨らみます。そのため、向付は亭主が最も心入れをする懐石道具といわれています。
どのような料理が盛られ、どのような人々が茶会を楽しんでいたのかと想像しながらサンリツ服部美術館が所蔵する向付の数々をお楽しみください。