抹茶を点てるための茶道具は美的価値や伝来などが重視され、大切に伝えられてきたものが数多くあります。特に由緒ある優れた茶道具は名物と呼ばれ、なかには一国一城に匹敵するほどの高い値打ちの評価を受けたものもありました。
このような貴重な茶道具に並々ならぬ関心をもっていた茶人は多く、図を添えて、寸法、付属品、所蔵者など詳細な情報が記された名物記が数多くつくられています。現在では、人から人へと移動することが多い道具の伝来や、道具に対する価値観の変化、失われてしまった道具の姿を知ることができる史料として、茶道史研究には欠かせない存在となりました。
この度、サンリツ服部美術館では、名物記の変遷をたどりながら茶道具の名品をご紹介いたします。また、本展では近年収蔵いたしました茶道具も初公開いたします。茶人たちが憧れた名物の世界とともに、当館に新たに加わりました魅力あふれる茶道具の数々をぜひご堪能ください。