「食」には、単に食べること以上の社会的・文化的な意味があります。
各国にはそれぞれの食文化がありますが、日本の食文化としてまず挙げられるのは、茶の湯の懐石でしょう。
懐石は、茶の湯にともなって供される食事であり、茶に招いた人々をもてなすことを目的としています。食事をすることによって、亭主と客のコミュニケーションを図ることができるよう、料理そのものはもちろんのこと、その出し方や器にも工夫が凝らされてきました。
本展では、桃山から江戸時代前期に製作された陶磁器を中心に、懐石やもてなしのための食器を約60点展示いたします。手の込んだ形や彩り豊かな文様を持つそれぞれの器には、どのような料理が盛りつけられ、人々を愉しませてきたのでしょうか。器の歴史とともに、懐石の歴史も探ってみます。