中国で生まれ、我が国にもたらされた漢字は、日本文化に大きな影響を与えつつ、やがて日本人の感性にあった仮名を生みました。仮名は、その発展の過程で草書化が進み、平安中期の国風文化の最盛期には、高野切のように流麗典雅な仮名美の最高峰とされる名筆へと昇華され、同時に多様な仮名の表現が生み出されました。
鎌倉時代、新たなる武家文化の到来とともに、華麗な仮名の表現は影を潜めますが、かわって、中国の宋・元時代の禅僧の墨蹟がもたらされ、謹厳なる漢字の文化が隆盛をみます。禅僧の墨蹟は、後に茶の湯と結びつき、床の掛物として高く評価されるようになりました。
本展では、前後期にわたって、サンリツ服部美術館所蔵の仮名と墨蹟の名筆約50点を展示し、書の歴史をたどります。
また、196葉の歴代名家の書をおさめた手鑑『草根集』も初の全面公開となりますので、ぜひこの機会に、多様な書の表現の魅力をお楽しみいただけますと幸いでございます。