わが国の茶の湯は、単に茶を喫するのみにとどまらず、道具一つ一つにも心を尽くし、折々の行事や四季の変化にも心をよせる、豊かな精神文化を育んで参りました。新春を迎え、人々はこの年の息災を祈りつつ、冬枯れの中に見出す新たな春の息吹に希望を感じることでしょう。このような日本人の繊細な心によって選び抜かれた茶席の道具は、その取り合わせによって、また新たなハーモニーを奏でます。
本展では、当館のコレクションより約70点を出品し、春をテーマに茶道具の取り合わせ展示を致します。正月や節分を祝い、菅原道真ゆかりの梅花祭や遠州忌、利休忌など、古人を偲ぶ茶家では大切な行事が続きます。寒さなお厳しき折、茶の湯の道具組みのなかに、うららかな春の兆しを感じていただけますと幸いでございます。