社会の喧噪の中に身をおく現代人は、時に自然との触れあいに、心のやすらぎや癒しを求めます。ただ、西洋では、自然が畏怖の対象からやすらぎの対象へと変わったのは、近代に入ってからのことと言われています。それまで宗教画や物語画の背景に過ぎなかった「風景画」も、独立した画題として確立していきました。17世紀、オランダ・フランドル絵画の黄金期には、ブリューゲルやレンブラント、それに続く画家たちの手によって優れた「風景画」が生み出され、19世紀の全盛期へ向けて、その表現は成熟していきました。今なお多くの人々に愛され続ける「風景画」には、自然への畏敬、田園ののどかさ、豊穣への祈り、郷愁、旅先で目にした風景への感動など、自然の懐に抱かれて暮らす私たち人間の営みが反映されているのです。そして、この人間の営みへの温かなまなざしは、愛しき家族や日常生活にも向けられ、優れた作品の数々を生みました。
本展では、17世紀のレンブラント(1606-1669)の銅版画をはじめ、19~20世紀にフランスで活躍したピエール・プラン(1838-1913)、ブラマンク(1876-1958)、マルケ(1875-1948)、デュルメール(1865-1953)、ボーシャン(1873-1958)などの風景画や、テレスコヴィッチ1902-1978)、ルノワール(1841-1919)などの家族や日常生活の情景を描いた作品などを出品いたします。
四季の織りなす美しい諏訪湖の景色ととともに、作品に託された画家たちの心にふれ、やすらぎのひとときを過ごしていただければ幸いでございます。