当館の「服部一郎記念室」は、若くして世を去った彼が、その眼で選び、こよなく愛した作品の数々を順次ご紹介しております。この度は、そのコレクションより、『色彩の解放 シャガールからクリストまで』と題して、20点余の作品をご紹介いたします。
19世紀の終わりから、絵画は現実を写すという役割を次第に終えて、自由な色彩と形を追求する表現の場となります。やがて物の輪郭や質感よりも、色そのものが主役となる抽象絵画が誕生します。それは人間の視覚に忠実に描くという伝統的な手法の否定であり、まったく新しい芸術様式が歴史に登場した瞬間でした。
本展は「形のゆらぎ、色の解放」「自律する色彩」「新しい世界へ」の3章構成となります。第1章ではシャガールやデュフィなど、自由な筆使いで色の新しい役割を追求した作品をご覧いただきます。第2章では色が画面を支配する20世紀の抽象絵画を中心に、第3章では色面によって日常風景を一変させるクリストによる試みをご紹介いたします。
色彩の響き合いが目に楽しい作品から、色を用いた新たな表現に挑もうとする意欲作まで、色彩の役割の変遷をご覧いただけましたら幸いでございます。