服部一郎コレクションより、初出品12点を含む、日本人画家の作品をご紹介いたします。
明治維新以降、西洋の文物が一気に日本に流れ込み、近代化が進むと、日本の絵画にも大きな変化が訪れました。西洋を範として美術の諸制度が整えられるなか、日本の画家たちは日本人らしい絵画を手探りで追い求めていきます。ヨーロッパに留学して、油彩という新しい画材や技法をアカデミックに学ぶ画家もいれば、現地に長く暮らして前衛芸術家として活躍する画家もいました。また日本に在って古典的風景に創意を加えていくことで自らのアイデンティティを掘り下げていく画家もいました。そのような探究の過程で、画家は身の回りの世界へ目を向け、描き、研鑽を積んだのです。
第1章「小さなものを愛でる」では、明治生まれの画家たちが愛した小世界をご紹介します。私たちの生活の中でもっとも身近な存在であり、誰もが日々目にしている花や野菜、動物。画家たちはありふれた素材に深い愛情のまなざしを向け、その美しさを描きとめました。第2章「心に映る景色」は、戦後に活躍した画家たちを中心としています。彼らは、自分が暮らした土地の風景を、おのおのの画風で描き、画布に残しています。第3章は「祈りの形」として、日本を代表する版画家である棟方志功をご紹介します。ゴッホに憧れ、最初は洋画家を目指した棟方でしたが、文学界における日本浪漫派の流行や柳宗悦らの民芸運動の影響を受けて、日本の土着文化や仏教主題を自らのテーマとしていきました。一度見たら忘れられない彫刻刀の線と鮮やかな色彩は、日本という土地に根差したエネルギーに満ちています。
これまでご紹介する機会の少なかった近現代の日本人画家の作品群。服部一郎コレクションの新しい一面をお楽しみくださいませ。