「花鳥」という言葉は、花は植物を、鳥は動物を意味しており、日本最古の和歌集『万葉集』にも使われています。東洋美術でも人気の高い花鳥画は、古くから絵画の主題や工芸品の意匠として描かれてきました。色鮮やかに咲く花や美しい動物が織り成す作品には、自然への賛美や憧憬だけでなく、いきものに願いを託した人々の姿が表されています。古代中国では、霊的な力を持つ存在としていきものが描かれましたが、唐時代になると華やかな装飾として好まれ、宋時代以降には吉祥を表すモチーフとして意匠化されていきます。一方、中国の影響を受けた日本の花鳥画は日本の伝統を取り入れながら、室町時代以降、美しい四季の様子を表す独自の文化へと発展しました。
この度は、サンリツ服部美術館のコレクションの中から、神への畏敬を表した「青銅饕餮文鼎」や、長寿や子孫繁栄を意味するいきものが描かれた絵画や陶磁器、四季折々の風景の中で遊ぶ遊女を描いた「四季寛文美人図屏風」などの作品を通じて、東洋文化の中で多彩に表現されてきた花鳥画の世界をご紹介いたします。
人々の生活や文化に彩りを添えたいきものたちの姿をお楽しみください。