古来より日本人はあらゆるものに神が宿っていると信じていました。その数は非常に多く、「八百万の神」といわれるほどです。太陽、月、雨、風、雷、山、川などは恵みや災害をもたらす存在です。そのため、日本の人々は自然を神と敬い、生活を営んできました。また、土着の神と朝鮮半島や中国から伝わった仏教が共存していることも日本ならではの文化でしょう。奈良時代、仏教は鎮護国家を目的とする国家事業の一つでした。しかし、平安時代になると個人の魂の救済のために信仰されることが多くなります。その後、仏の教えは庶民にも広く伝わり、神・仏ともに信仰されるようになっていきました。
美術のジャンルの中でも多く制作されているものの一つに宗教美術があります。日本でも信仰や布教、祈願のために、その宗派に関する書物や絵画、彫刻が制作されてきました。特に奈良時代から鎌倉時代にかけて、書や絵画、彫刻などの様々な美術作品に大きな影響を与えています。
この度、サンリツ服部美術館のコレクションの中から、仏画、社寺縁起や高僧伝の絵巻、経典などを展示し、それらの作品から見えてくる人々の祈りの姿に迫ります。