天正19年(1591)、茶の湯を大成させた千利休が自刃します。ここまでは、堺を中心とした商人たちが茶の湯をリードしていましたが、利休という大きな存在を失ってからは、彼らの表舞台での大きな活動は次第に減っていきます。そしてその代わりに、様々な身分の人々が、自分たちに合った独自の茶風を確立していったのです。
武家からは安土・桃山時代から茶の湯を嗜む人々が多く登場しています。彼らはもともと利休のもとで茶の湯を学び、名物の道具を用いて茶会を開いていました。ですが江戸時代になると、利休の侘びの精神を受継ぎつつも、武家の趣味や格式を重んじる道具や点前が次第に用いられるようになります。武家らしいスタイルの茶の湯の成立です。これによって、将軍や大名、旗本などにも茶の湯は広く浸透していきました。
この度サンリツ服部美術館では、古田織部、小堀遠州、片桐石州ら大名茶人ゆかりの作品や同時代に制作された茶道具をご紹介する展覧会を開催いたします。本展を通じて、桃山時代から江戸時代にかけて大名たちが作り出した茶の湯の世界をお楽しみいただけますと幸いです。また、織部らと交流のあった本阿弥光悦の傑作・国宝「白楽茶碗 銘 不二山」も併せて特別出品いたします。