この度は20世紀に制作された絵画が多く収蔵されている服部一郎コレクションより、幻想的な光景を描いた作品をご紹介いたします。
古来より、人間と鳥の羽の描写を組み合わせて天使を表現するなど、現実にあるものを組み合わせて、実際には見ていない想像の世界を表した作品は繰り返し描かれてきました。
19世紀末には、科学と機械は万能であるという風潮への反発心から神秘主義が流行し、絵画に限らずあらゆる芸術分野で、目に見えない理念や感情を表現しようという動きが生まれます。20世紀になると絵画において、写実からの脱却を試みる芸術家が多く登場しました。このような芸術家たちは芸術の意味を問いながら自己の表現方法を追求していきます。次々に立ち現れては広がっていく芸術運動の中に、夢や無意識を重要視したシュルレアリスムもありました。
本展の第一章では、現実の世界にあるものを描きながら、見るものをどこか別次元へいざなうような作品をご紹介します。第二章では、神や仏といった、人智を超えた信仰の世界を、レンブラントの銅版画や棟方志功の仏画を通じて巡っていきます。
本展を通じて、人間の内側に広がる自由な空想の世界をお楽しみいただければ幸いです。