日本の伝統的な室内空間の一つである「床の間」。床の間は座敷の上座に畳より一段高く設けられています。元々高貴な身分の人々が座すためにつくられた空間で、最も神聖な場所ともいわれています。
茶の湯では顔を合わせた人々が心を合わせてより良い席をつくる「一座建立」の精神が大事とされています。茶会の席入りで客が最初に拝見するのが床の間です。亭主が季節や客に応じて趣向を凝らした道具でもてなす茶会では、床の間には絵画や墨蹟などの掛物を掛けて、花入に季節の草花を生け、時には香炉や香合なども飾ります。客は床の間を拝見することで亭主の心配りを感じ、これにより亭主と客の間に精神的な交流が生まれ、一座建立の茶会を行うことができるのです。床の間は、亭主のもてなしの心をうつした空間といえるでしょう。
本展では、サンリツ服部美術館のコレクションの中から掛物や花入など床の間を飾る道具をご紹介いたします。名品の数々を通じて、日本で発展していったもてなしの文化をお楽しみください。