サンリツ服部美術館の服部一郎記念室では、1995年の開館よりセイコーエプソン初代社長の服部一郎(1932-1987)が収集した近現代西洋絵画をご紹介してきました。開館25周年にあたる2020年は、そのコレクションのなかから特に一郎が親しんだコンスタンタン・テレスコビッチ(1902-1978)の作品をご紹介いたします。
コンスタンタン・テレスコビッチは、ロシアに生まれ、フランスで活躍した画家です。身近な題材を情感あふれる描写で描くアンティミスト(親密派)の画家で、日常生活のなかに見出した喜びを、温かみのある色彩と躍動感のある筆で描きました。
服部一郎は若い頃にスイス、アメリカへの留学を経験し、その後も世界各地を飛び回る生活を続けるなかで、ごく自然に西洋芸術への理解と審美眼を育み、作品を集めるようになりました。自宅やオフィスにもテレスコビッチの作品が飾られていたことから、一郎が親しみ深いその作品を好んでいだことが推測できます。中でも少女を描いた作品に、多くの父親たちと同じように我が娘のことを思い、その幸せを願っていたのでしょう。
身の回りにある幸せを静かな情熱で描いたテレスコビッチの作品をお楽しみいただければ幸いでございます。